アメリカ大統領ともあろう人が、なぜ突然NFLを執拗に批判し始めたのかは甚だ疑問です。もしかしたら、過去の腹いせもあるのかもしれません。

トランプ大統領は1980年代にNFLに対抗するリーグとして生まれたUSFLのニュージャージー・ジェネラルズのオーナーとして、NFLから選手を引き抜いたり、試合開催時期をNFLと重なる秋へと変更させるなど、強気の姿勢を見せていました。

しかし、NFLには到底かなわず。苦肉の策として他チームのオーナーらとNFLを反トラスト法違反で提訴しています。裁判では勝訴はしたものの、17億ドルをも求めた損害賠償で認められたのはたった1ドルのみ。経営が破綻したUSFLは1986年には閉鎖に追い込まれました。

それから約30年後の2014年には、ラルフ・ウィルソン・オーナーが他界したビルズの買収を試みて失敗しています。長年NFLチームのオーナーになるのを夢見ているロックシンガーのジョン・ボンジョヴィも、カナダの投資家グループに加わって入札を行いましたが、結局ビルズは14億ドルでNHLのバッファロー・セーバーズも所有するテリー・ペグラ現オーナー夫妻へ売却されました。

NFLとは敵対関係にあった大統領ですが、個々のオーナーとは親交があることでも有名です。日本の安部首相が訪米した際に、大統領が所有するフロリダのリゾートホテルでペイトリオッツのロバート・クラフト・オーナーが2人の首脳と同じテーブルに座っていた写真を目にした人は多いはずです。ジェッツのウディ・ジョンソン・オーナーはトランプ大統領就任後に駐英国アメリカ大使に任命されています。

CNNによると、クラフト・オーナーをはじめ、複数のNFLオーナーが1月の大統領就任式典開催基金に多額を寄付しています。ジャガーズのシャド・カーン・オーナー、カウボーイズのジェリー・ジョーンズ・オーナー、テキサンズのロバート・マクネア・オーナー、レッドスキンズのダニエル・スナイダー・オーナー、ラムズのスタン・クロンキ・オーナーはいずれも100万ドルを寄付しています。

パキスタンからの移民であるジャガーズのカーン・オーナーは、大統領の発言に反論する声明を発表した後、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われた試合前には、選手と一緒に腕を組んで一列に並びました。カウボーイズのジョーンズ・オーナーは国歌斉唱前に選手と腕を組んで一列に並んで片膝をついています。

いずれも、大統領に抗議する行為というよりも、選手との結束力を示したもの。オーナーにしてみれば、視聴者やファンに敵を作ってしまうような問題は避けたく、万人受けする商品を売って儲けたいのが本音のはずです。

ただ、NFLは選手の大半が黒人で、その選手が表現の自由を行使しただけでクビにせよと言われて沈黙していたのでは、それに同意したことになります。だから、オーナーも動かざるを得なかったというのも事実でしょう。「こういう事情なんでご理解ください」と大統領に説明しているオーナーがいても不思議ではありません。

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